垂直面放射パターンの重要性

アンテナは3次元空間にエネルギーを放射するので水平面と垂直面の両面の放射パターンを見るべきですが、それに気づいたのはアンテナを作り始めてだいぶ経ってからでした。

  

シミュレーションソフトを始めたばかりの頃は水平面の放射パターン(いわゆるビームパターン)ばかり気にしていましたが、そのうち垂直面放射パターンが気になりだし、やがて垂直面放射パターンを最重要視したアンテナ作りになりました。

 

この結果、最初はサイズに対してイマイチだった送受信性能が回数を重ねるごとに改善され、今では「100%成功する」手法として確立したつもりでいます。

  

実際のやり方はとてもシンプルで、実際に設置する高さで垂直面放射パターンのサブローブをできるだけ抑制してメインローブにエネルギーが集中するようにエレメントの長さと間隔を調整するだけです。

 

もっとも重要なのは、できるだけブームを長くすることです。

 

夢も希望もない話ですが、短いブームでエレメント数を増やすのは逆効果でしかありません。「とにかくブームを長く!」、これだけです。

 

ブーム長が決まれば、まずはフロントゲイン最優先で基本設計を行いますが、これはシミュレーションソフトのオプティマイズ機能を利用すると時間短縮できます。

 

基本設計が出来上がったら、SWRとFB比を調整して総合的な完成を目指します。

 

このように垂直面放射パターン重視作ったアンテナは必ずいい仕事をしてくれます。ただし、誤解のないように書いておきますが、十分なブーム長が大前提です。(7〜18MHz>15m, 21〜28MHz>12m)

 

 

 

■C社4エレ 15mH

ベアフットだと、聞こえる割に飛びがイマイチ。前方70度前後の高角に入力したエネルギーの半分近くを放射しるので、30度以下では実質50W。人気の同社のデュオバンダー(14/21)やマルチバンダー(7/14/21)でも同様のパターン。

 

 

 

■ C社4エレ 18mH

4エレの地上高を3mアップするも、送受信がわずかに改善した程度。F/B比とサイドの切れに体感的な違いがありますが、他のJA局がQSOしているDXが聞こえないことも時々あり、不満が残る。

 

 

 

 

■ C社4エレ 20mH

15mHに比べると飛びとビームのキレを感じるものの、依然として弱い信号に対する受信能力と送信のパワフルさが足りない。200Wでのパイル参戦は連戦連敗。

 

 

 

 

 

 

■ 自作5エレ 18mH

 ブーム長14mの5エレで、電気的な特性は15mH6エレとほぼ同じ。実際の体感差も同程度。「Sメーターが振らないほど弱い信号」に対しては6エレのほうがより太く聞こえ、目的信号を鋭いビームの先端で捉えている感がある。この時初めてアンテナ自体のS/N比の違いを経験。

 

 

 

■ 自作6エレ 15mH

ブーム長は16.5m で、C社の6エレモノバンダーとほぼ同じ。入力エネルギーのほぼすべてを前方低角に集中しており、上の4エレに比べると抜群に飛ぶようになり、明らかにパイルでのリターンが早まります。弱い信号に対する了解度が向上、バンドのオープン時間が4エレに比べて前後10〜30分ほど長く感じます。

 

 

 

■ 自作6エレ20mH

 6エレを5mアップ。PC上は打ち上げ角が3.8度下がったものの、メインローブがやせ細り、前方50度方向へのエネルギー放出が増加。

実際のところ15mHと大差なし。欧州深部〜アフリカ西部、北米東海岸〜カリブ海方面への飛びが良くなったような?(バンドコンディションの違いかも) 。とはいえ、15mHのタワーをわざわざ20mHに建て替えるほどの違いは感じません。笑

 

 

 

 

同一地上高での5エレと6エレの性能差


■ 自作5エレ18mH

製作依頼を受けた14MHzの5エレ。ブーム長12mでややナロー気味ですが、私以外の人には良い評価をもらえる送受信性能だと思います。笑

 

■ 自作6エレ18mH

同じ高さでブームを5m延長。とにかく、受信時のノイズが少なくなり、微弱信号に対する受信能力が向上。フロントゲインが少し下がったものの遠距離への飛びが改善。Eu局から1st JAのSASEが届きました。

 

その時のMMANAデータ。組み合わせワイヤーは、30mm, 25mm, 20mm,  17mm/13mm, 10mmというCD社の残骸パーツをそのまま使いまわし。

 

実際は、バンド内SWR<1.3

高い方でやや高性能なSSBer仕様です。主にD4とRefの長さを調整することで右下がり(CWer仕様)にできます。

 

 

 

同一アンテナでの地上高の性能差